名張市地域活動支援センターひびきを利用している山本渉さんと、そのご両親による「家族三人展」が、名張市内で開催されました。
自身が抱えてきた精神疾患の苦しみを少しでも地域に理解してもらえればと、積極的な社会活動を行ってきた渉さんでしたが、昨年に頸部脊柱管狭窄症(けいぶせきついかんきょうさくしょう)を発症し、歩行はおろか手も動かせない状況が続きました。
作品に見入るひと時。初日には亀井利克名張市長も来場され、励ましを頂きました。
しかし今年5月に手術を受け、「少しずつ動き始めた手で、自然にペンを走らせていた。」という渉さん。
芸術家である両親とともに、活動再開の証として展示会を開催することにしました。
ボールペンで細かく刻んだ線を重ねて陰影をつけながら、頭に思い浮かんだままペンを走らせる。下絵や構図のデッサンなどもない、描きなおしが効かないボールペンで、すべてピュアな気持ちを表しています。
「目の表し方がとても気にいっているんです。」そのつぶらな瞳を、社会はどのように感じるのだろう。
邪念を捨ててマントで体力を温め、月の陰りに駆けだすチャンスを伺ってでもいるかのようにも映ります。
まとわりついている二匹の犬は、「まだ行かないの?」「オレも連れて行ってくれよ!」とでも叫んでいるのでしょうか。
この3カ月、色々なタッチを用い、様々な作風にチャレンジしたといいます。
少し太目のボールペンで臨んだ作品も、「雑に描いているようですが、目の表し方に気を遣いました。」
純白の空間に、象徴的に表われている人間の弱さ。周りの空白が本人に押し寄せるプレッシャーのようにも映りますが、弱さは優しさにも通じるもの。この瞳に、人間が本来持っている優しさをも垣間見るようです。
「腕を描いていたら、花火が描きたくなって…」描き上がると、ちょっとコミカルな表情の絵に仕上がっていたと言います。
線香花火の光で顔が照らされ、モノトーンなのに温かい色彩を感じますね。
作品について来場者と語り、思いを交換するふれあいは楽しみの一つです。
家族展という、ゆとりの中で自分の作品に向き合うと、主人公がまた違ったメッセージを送ってくるかのよう。それを、次の創作へつないでいくのでしょう。次回作に期待です!
「一人じゃないよ!」・・・三人展、ご家族の愛情と温もりの証ともなったようですね。
素晴らしい展示会でした。